歯槽膿漏(歯周病)と予防医学

 

【 歯槽膿漏(歯周病)って何? 】  
 
                 
 
まずはじめに、歯槽膿漏とは何か、手短にお話してお
きましょう。

歯槽膿漏すなわち歯周病は、歯ぐきと歯の間にたま
る、歯石というバイ菌の塊が出す毒素が原因となって
発生します。


日頃の精神的ストレスや肉体的疲労が重なると、自律
神経のうちでも交感神経の活動主導となり、好中球と
い活性酸素を大量に発生する白血球が、歯槽膿漏を引
き起こすばい菌を追って集まり、ばい菌を貪食した後
に、大量の活性酸素を周囲にばら撒きながら死んでい
きます。

活性酸素は周囲の組織細胞の細胞膜を酸化しながら、
連鎖反応を繰り返して、酸化破壊域を徐々に広げてい
きす。


さらにこの白血球は自己修復不能とみた傷ついた口腔
内の細胞組織を認識してさらに破壊しにかかります。


歯茎の中で炎症がひどくなると、出血にともない、ば
い菌と白血球の死骸からなる排膿がこのポケットとい
う歯ぐきの隙間からじわじわと起こり始め、それらの
だす毒素によって口臭がきつくなってきます。

それとともに歯ぐきは、炎症による腫れが出てきて、
ピンク色から赤黒い色に変わってきます。

 
30代前後になると、暴飲暴食やストレス、運動不足
などにより、多くの人が程度の差はありますがこうし
た症状が出始めます。


歯科医院で、定期的にこの歯石取りを行っておけばよ
いのですが、何年もそのまま放置すると、歯を支える
骨までばい菌の毒素や活性酸素、破骨細胞のだす代謝
物により溶け始め、毛細血管の収縮で血液の流れも悪
くなり、老廃物も排泄されにくくなります。



                  

炎症の部位では、サイトカインなどの炎症性物質や先
の好中球が大量に発生しています。腫脹や痛み、排
膿・出血もひどくなり、やがて歯を支える骨がなくな
り、歯がぐらつき始めます。

そしてある時突然、様々な精神的肉体的素因で身体の
抵抗力が弱った頃に、急性発作のような形で激痛が走
り、歯ぐきが大きく腫れます。レントゲンをとって見
ると大きく骨が溶けている像が明確に映し出されてい
たりします。


部分的なこともありますが、かなり広範囲にわたって
連鎖的に骨が溶けて、一度に何本もの歯が揺れ始め、
噛むこともつらくなることもあります。


歯周病の部位でできた炎症性物質や毒物は血流に乗っ
て全身を巡ります。当然その先には心臓や肝臓、腎臓
など重要な臓器があります。血管の中は、炎症性物質
や活性酸素によりヘドロのように粘性が増して、血管
が詰まりやすくなり、心臓の弁に悪さをしたり、脳の
細い血管などを破壊・損傷させる危険性も出てきま
す。

このように、歯周病は全身の臓器の病とも関連してい
ることが最近特に指摘されています。


定期的にお口のチェックはしてもらい、大事な歯を失
わないようにするとともに、目に見えぬところで意外
な慢性病の遠因にならないように気をつけましょう。
 





               





【 歯槽膿漏の予防と治療 】

           
            
 
さて、クリニックでお勧めしている歯槽膿漏の予防と
治療の仕方をご紹介しておきましょう。

 
 まずお口の診査に合わせて、レントゲンで骨の状態
と、噛み合わせを確認します。そして、患者さんの今
のお口の状態をわかりやすい言葉で説明します。


ここで治療計画を立案します。どのくらいの時間がか
かって、どんな治療をしていくのかをです。


大切なことは、口腔内の善玉菌と悪玉菌のバランスの
崩れを整えていって、免疫細胞が過剰反応を起こさな
いようにすることです。


ここでは必要に応じて、漢方やレーザーなども応用し
ますが、ムシバや歯槽膿漏を引き起こすバイ菌を退治
する乳酸菌などもご紹介しています。

 


引き続き、歯槽膿漏を引き起こす悪玉菌の縄張りが狭
まったところで、ムシバや歯槽膿漏の菌を退治する力
を持つ善玉乳酸菌を応用してそのエリアを広げていく
という方法もあります。


一端、乳酸菌などの善玉微生物叢が良い状態でお口の
中に形成されてしまうと、後から悪玉ムシバ菌や歯周
病菌が縄張りを広げようとして入ってきても、善玉菌
に邪魔されて、どうやら容易には広がることが出来な
くなるようです。 

(タバコの吸いすぎ、よほどの不摂生やストレスによ
る体調不良を重ねるなどして、悪玉菌が繁殖できるよ
うな環境をお口の中に再び作りでもしない限り
は・・。)



             
善玉菌               バイキン虫


口腔内の微生物叢のバランスの安定を患者さんとの協
力で図りながら、スケーリングという歯石取りをまず
数歯ごとに行っていきます。


それに並行して、お家でしていただく薬草などによる
歯ぐきのマッサージ法と、歯槽膿漏の予防用の歯ブラ
シの使い方を、実技をまじえながらわかりやすく専門
の歯科衛生士が説明していきます。


歯根の深くにしつこくこびりついた歯石に関しては、
場合によっては歯1本ずつルートプレーニングという
汚れ取りをします。




                     
【 活性酸素と東洋医学 】

        
        





炎症の起きている部位では先にも述べたように、大量
の活性酸素が発生しています。ばい菌を処理する為の
好中球という白血球からの大量の活性酸素の発生も、
ゆき過ぎると自分の歯ぐきの周囲組織や骨まで傷めて
しまいます。


自律神経の失調などと同じようなメカニズムで、ご自
身の自律神経のバランスの崩れとともに免疫細胞が制
御を失って、自分の身体まで傷つけてしまうのです。
こうした状況がお口の炎症の箇所では起きています。


こうした活性酸素やその他の炎症生成物による弊害を
抑えてくれる古来、
駆於血剤といわれる血行改善をは
かる漢方生薬などもご紹介しています。


それに加えて歯槽膿漏やムシバ菌を退治してくれる特
殊な乳酸菌(LS-1,ロイテリ菌など)の摂取などもご
紹介しています。口腔内の微生物環境を悪玉菌優勢に
傾かないように、日本の伝統的な植物由来の発酵食品
の摂取や心身のストレス解消も気を付けましょう。

 途中に関門はあっても、消化器系の管は一つながり
と思っておいたほうがいいようです。口腔内の健康
は、まずは腸管の微生物環境を上記のようなもので整
えながら同時に行っていくとよいように思われます。






               



さらに患部周辺や特定の皮膚上の東洋医学のツボに
出力ソフトレーザー
を照射したり、手のひらのツボの

井穴刺激をしたりして、副交感神経の活性を高めま
す。

そして、免疫細胞でもリンパ球の造成を促しながら、
血管拡張により歯周組織の血行改善をはかり、代謝物
の排泄と創傷の治癒を促進します。

 
体質的な原因からその局所症状として歯周病が生じて
いる場合などは、東洋医学的な診断を同時に行って、

低周波治療器などで関連経穴(ツボ)に物理的刺激を加
えたり、首筋や手足に鍼灸有資格者が遠隔的に適切な
ツボをとってあげて家庭でのお灸を薦めたりもしてい
ます。 




               


日頃のストレスの解消法のひとつとしてのお灸や簡単
なストレッチ法、東洋医学的気功法などを希望に応じ
てお教えしたりしています。


精神神経免疫学や最近の免疫学の知見では、歯周病を
も含めた炎症性の疾患は、生体に及ぼされるストレス
により、交感神経と炎症性の免疫細胞とが連動しあっ
て起こっているという考え方も提示されています。

 
お口を含めた全身の健康改善のためにも、プロバイオ
テイクスなどの乳酸菌による腸内やお口の予防医学の
知識を知り、排泄による体内浄化の大切さを知ってい
ただいております。


また東洋医学本来の予防医学的な長所を生かして、古
来の先哲の叡智であるツボお灸の知識を仲立ちとし
て家族の健康と絆を、改めて皆で考えなおせる望まし
い機会だと思います。


また、マクロビオテックとよばれる自然食療法を行っ
ていくことで、身体を内から浄化して毒出しをするこ
とで、お口の病変のみならず、様々な慢性病や難病を
も同時に克服していくことも可能です。”おばあちゃ
んの智慧袋”を紐解くことで、現代の不自然な環境が
引き起こす様々な心身の異変も、現代医学では治療が
困難でも、人間の本来のあるべき姿を見つめなおすこ
とで、意外な突破口が自然な療法の中から得られる可
能性が秘められているように思われます。一例とし
て、酵素玄米は作り方も簡単で、快食快便になり、長
年溜め込んだ毒だしには最適で、おいしい上に本当に
身体が蘇ります。皆さんも第一歩として是非お試しあ
れ。


                 
【 噛み合わせと全身との関連性 】


               


お口の症状である歯槽膿漏も、東洋医学的に見ると、
全身的な体質、或いは特定の経絡というエネルギール
ート上の気の流れの乱れにより生じると解釈します。


また、かみ合わせの乱れにより、顎や頭・頚部周辺の
筋肉の異常緊張や血行不良を招き、様々な不定愁訴が
全身にも波及するといわれています。


ある研究グループ(噛みあわせと全身との関係を考え
る会)の報告では、顔の顎関節と腰の仙腸関節周辺に
は重要な相関性があることも指摘されています。希望
により、キネシオロジーテスト(筋力診断テスト)な
どにより、患者さんにわかる形で、噛み合わせ調整前
後の腰や肩の関節や、筋肉の可動範囲の広がりを実際
に確かめてもらうこともしています。


からだの緩みや体調の変化をその場で自ら確認するこ
とで、噛み合わせとの相関性を納得し、やがてその先
にある自己治癒力の可能性に期待を持つこともできる
ようになります。


     

           
       




お口の周辺や頭頸部には、多くの、東洋医学でいう生
体エネルギールート(経絡)が流れています。


東洋医学の臨床家は、脈診や望診、触診を通して体質
や病状、異常経絡と治療経穴(ツボ)を探し当て、漢方
薬を処方したり、鍼灸などを施したりします。 

 



歯周病を生じさせている体質や関連経絡のエネルギー
バランスの異常が、何らかの東洋医学的な処置を通し
て改善していくに伴い、全身の局所としてのお口の中
の病巣周辺の血行や治癒力も改善していく可能性も高
くなるわけです。